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朗読劇『子守唄よ』・フクさんに扮して (中也の会、会報に掲載) [メディア]

 二〇〇一年四月、第六回中原中也賞贈呈式で『中也の長州〜方言による朗読』と題して、中也の詩と中也の母・フクさんの口述本からの抜粋で構成したものを語らせていただきました。失われかけていた山口弁を取り戻す為に、亡き恩師や同級生達にテープに収録してもらって特訓した成果でしょうか。思いのほか会場に笑いが興きました。その時、佐々木幹郎さんが「フクさんの語りは貴女しかできないよ。鳥肌が立ちましたよ」と、ポンと背中を押して下さったのです。以来、何時かフクさんの語りを舞台表現したいと温めていました。
 昨年(二〇〇六年)七月十三日、佐々木さんのご紹介のもとに、東京藝術大学の成田先生、VOICE SPACE(東京藝術大学現代詩研究会)の皆さんと初対面しました。その場で六年越しの中原フクさんへの想い(何故フクさんか?)を語らせていただき、朗読劇『子守唄よ』はスタートしました。早坂牧子さんによる脚本が今年(二〇〇七年)三月下旬に出来上がりました。私は十七年間、ひとり語りの舞台を創っていましたので、十五名の出演者とのコラボレーションは新しい挑戦でした。七月十一日から、音楽班と朗読班に別れて稽古が始まりました。中村裕美さん作曲の『子守唄よ』が出来上がり、VOICE SPACEのメンバーによる初披露を聴かれた佐々木さんは、「涙が出そうだったよ。これでこの舞台は成功する。」と力強くおっしゃいました。
 フクの昔話を聞いているうちに霊界から甦る中也。中也を軸にして母フクと恋人泰子の語り。中也詩の新解釈と絶賛される新曲十一曲。スクリーンに投影される当時の湯田温泉風景・泰子・愛息文也・父謙助・中也の写真。今までに無い中也の世界の舞台創りを進める監督の情熱は、時には出演者に届くのに時間がかかりました。私も、フクさんの足元にも及ばない自分とのギャップをどう埋めて行けばいいのか悩みました。どんな寂しさにも苦しさにも耐えて、逆境をはねのけて立ち直る強さを持ち合わせたフクさん・・・。
 稽古を積み重ねて迎えた故郷山口での公演、中也の命日の前日に行なった東京公演で、産みの苦しみと喜びを全員で分かち合えたと思います。公演後一週間位は、フクさんが守っていて下さったのか、背中にピッタリとフクさんがついて離れませんでした。

 芸大での稽古中に突然、携帯電話で母の死の知らせを受けました。フクさんとダブらせていた、とても教育熱心で厳しい母・・・。義母を二月に見送っていたので、二人の母に捧げる舞台になりました。稽古の時に母の着物を、舞台では義母の着物を作り直して身につけました。
 今、ゆっくりフクさんと対話しています。


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